幸運を招来する法「節食開運説」


水野南北が「万に一つの誤りなし」と自負し、「幸運を招来する法」と広言した節食開運説とはどのようなものか。

その基本は言葉どおり、食を節することにある。
その要点をまとめると、次の十項目に整理できる。

一、食事の量が少ない者は人相が不吉な相であっても、それなりに恵まれた人生を送り、早死にしない特に晩年は吉となる

二、食事が常に適量を超えている者は、人相が吉相でも調いにくい手がもつれたり、生涯心労が絶えず、晩年は凶となる

三、常に大食、暴食の者は、たとえ人相がよくても運勢は一定しない。もしその人が貧しければますます困窮し、財産家でも家を傾ける大食、暴食して人相が凶であれば、死後に入るべき棺もないほど落ちぶれる

四、常に身のほど以上の美食をしている者は、たとえ人相が吉でも運勢は凶になる美食を慎まなければ家を没落させ、出世もおぼつかない。まして貧しくても美食する者は、働いても働いても楽にならず一生苦労する。

五、常に自分の生活水準より低い程度の粗食をしている者は、人相が貧相でもいずれは財産をなし、長寿を得、晩年は楽になる

六、食事時間が不規則な者は、吉相でも凶となる。

七、小食の者には死病の苦しみがなく、長患いもしない

八、怠け者でずるく、酒肉を楽しんで精進しない者は成功しない成功、発展しようと思うならば、自分が望むところの一業を極め、毎日の食事を厳重に節制し、大願成就まで美食を慎み、自分の仕事を楽しみに変えるように努めれば、自然に成功するだろう

九、人格は飲食の慎みによって決まる

十、酒肉を多く食べて太っている者は、生涯出世栄達はない

この十項目とともに水野南北が強調するのは、感謝の心である。そのことを南北はこのように表現している。
いつもご飯を三膳食べる人なら二膳だけにしておいて、残る一膳を神に献ずるのである。実際に神棚にお供えしなくともいい。神仏を思い浮かべ、その神仏に向かって、ありがとうございますと念じればよい

三膳どころか、いつもは二膳も食べていない、という人がいるかもしれない。
だが世界中から食材が入ってくる現代の食事と違い、副食に乏しく主食が中心だった江戸時代の食事をもとに南北は述べているのである。
先に述べた十項目の節食も、このことを前提にして解釈する必要があるだろう。
主食ばかりでなく副食も含め腹八分目で箸を置く心がけがポイントである。

さらに南北は、これらの節食の実践とともに、表裏一体のものとして日常生活での心掛けを説く。
節食とともに日常の心掛けを実践することで運はさらにひらけ、強運となるいうのだ。

『致知』2007年9月号 日本弥栄の会代表・中矢伸一氏の記事より


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